金融機関のカモにされている: 劣後債は買ってはいけない3つの理由

資産運用

最近、ネット系証券会社では、10万円程度から買える劣後債も登場しており、積極的に販売しているが、以下3点の理由から一般個人投資家にとっては不向きな投資商品と言える。

ここでは、買ってはいけない3つの理由を説明する。

①元本が全額戻らない可能性がある

②想定した利回りが得られない可能性がある

③金融機関の手数料稼ぎの餌となる可能性がある。

そもそも劣後債とは

劣後債とは、一般の債券よりも弁済順位が劣る債券である。劣後社債や劣後特約付社債とも呼ばれる。劣後債の最大の特徴は弁済順位が普通社債よりも低いかわりに利回りが高く設定されている点だ。

米ドルを中心に外貨建てで劣後債を発行する日本企業は、近年ますます増えている。昨今の円安傾向および米利上げに伴う米金利の上昇により、劣後債の金利がさらに上昇傾向となっている。

普通の債券とどこが違うの?

劣後債は、弁済順位が中間に位置するハイブリッド証券の1つである。ハイブリッド証券が元利金の支払いを受けられるのは、普通社債の債権者に対する弁済が終了した後である。普通社債よりも債務を回収できなくなるリスクが大きい劣後債は、普通社債と同様の発行条件であれば購入者は集まりにくい。そのため劣後債は、普通社債よりも高い金利を付けることで購入者を募っている。

現在、世界では、200兆円程度の劣後債が発行されています。これまでは、その殆どが機関投資家向けで、個人が買えるものはほとんどありませんでした。

しかし、近年個人向けのものも徐々に増えています。これまで株式だけに投資をしていた人も、分散投資の一環として、劣後債への投資を検討されている方も増えている。

出典:楽天証券HP 初めての劣後債投資より

劣後債は2種類ある

劣後債には、期限付劣後債永久劣後債があります。それぞれの仕組みを簡単に説明します。

期限付劣後債

期限付劣後債は、劣後債のうち満期が定められた債券のことをいいます。弁済順位は、後述する永久劣後債よりも高く設定されます。

期限付劣後債のメリットは、満期が決まっており運用計画が立てやすい点です。一方デメリットには、永久劣後債よりも金利が低めに設定される点が挙げられます。

永久劣後債

永久劣後債は劣後債のうち、満期がなく、発行体が存在する限りは利息が払われ続けるものをいいます。

永久劣後債のメリットは、長期にわたり利息を受け取れる点だ。長期での利益の積み上げが期待できます。

一方、デメリットは、現金化するためには時価での売却となる点だ。永久劣後債は満期がないため債券が償還されることはない。投資資金の現金化を希望するなら、時価で売却することになる。そのため、債券の価格次第で売却損が発生する可能性がある。

永久劣後債の期限前償還条項とは

永久劣後債には多くの場合、期限前償還条項が付いている。期限前償還条項とは、発行体が任意に決定した時期に早期償還できる権利をいう。永久劣後債には満期が設けられていないため、期限前償還条項を定めることで、企業が債権を償還できるようにするためである。

そのため、永久といいながら、実際には5~10年の運用を想定した金融商品とも考えられている。

劣後債はどこで購入できる?

劣後債はおもに証券会社で購入できる。店舗型の証券会社はもちろんネット証券でも取り扱いがあるため、複数の証券会社で過去の取引実績を確認したほうが良い。債券は発行総額が決まっているため、人気の商品は短期間で完売することも少なくない

さまざまな企業が発行する劣後債は、商品によってリスクやリターンの大きさが異なる。納得がいく投資をするなら、購入前に商品内容をしっかりと確認することが重要であり、一般の個人投資家自身で購入債券を選ぶのは難しいため、金融機関等に出向きアドバイスを仰ぐようになる

最近、劣後債を発行した代表的な企業は

実際に劣後債を発行した代表的な企業には、楽天証券では、株式会社みずほ銀行(新発債)、日本生命(既発債)、SBI証券では、三菱UFJフィナンシャル・グループ(既発債)やオリックス(既発債)などが挙げられる。

劣後債を発行した企業の一例および発行条件

劣後債販売証券会社
金利/年(税引前)債券格付期間
株式会社みずほ銀行4.84%A約5年新発債券 楽天証券
日本生命6.25%A約年既発債券 楽天証券
三菱UFJフィナンシャル・グループ3.96%A-約4.4年既発債券 SBI証券
オリックス3.70%A-約3.8年既発債券SBI証券

2023年9月26日現在

ちなみに、個人向け国債(変動10年)の税引前金利は0.625%、米国債は4.184%、メガバンクの定期預金金利は0.002%であり、期待リターンは高いと言えますが、その一方でデメリット・リスクも高い金融商品である。以下買ってはいけない3つの理由を説明します。

劣後債を買ってはいけない3つの理由

その1: 発行体が倒産すると元本が返還されない!

劣後債のリスクの1つ目は、発行体である企業が倒産した場合に元利金が返還されないリスクが生じるケースがある。発行企業の信用力を格付け等でチェックすることが不可欠ではある。さらに投資を考える際には、外国通貨建てのため為替ヘッジするかどうかを考えることが必要となり、一般投資家にとってはハードルが高いと言えます。

その2. 早期償還によって想定した利回りが得られない!

劣後債のリスクの2つ目は、期限前償還条項により繰り上げ償還された場合、想定した利回りを得られない可能性がある点だ。期限前償還条項が付いた劣後債は、発行体が任意に決定した時期に早期償還されるケースがあります。

劣後債の資本への組入れ比率は、残存期間が5年以下になった時点から徐々に低減する。そのため、残存期間が5年を切ると企業にとっての劣後債の魅力が薄まるため、繰上償還される可能性が高い

先述のとおり、その時点で現金化するためには時価での売却のため、債券の価格次第では売却損が発生する可能性がある。

満期になれば、発行体が倒産しない限り元本が全額戻ってくるという、債券投資のメリットが享受できない可能性がある。

その3. 手数料稼ぎの餌となる!

株式の場合、証券取引所で売買されてついた値段が公示価格として示され、投信も基準価額が毎日公表されているので、投資する人にも、その「時価」的な情報がわかる。

また、株式や投資信託の場合、あらかじめ、手数料は定められている。株式であれば、売買を発注する際に設定されている売買手数料、投信の場合は販売(購入時)手数料と保有に応じて設定されている信託報酬がある。

一方で、債券投資を行った人は証券会社などの担当者から「債券には手数料はありませんので、ご購入金額1000万円が口座から引き落としされるだけです」という説明を受けたことがあるかもしれない。

しかし、債券販売は、証券会社が自身で仕入れた際の金額に自社の利益を上乗せして販売している。したがって、債券販売する証券会社などは手数料ゼロで販売しているわけではない

つまり、販売会社が手数料の水準の高低を自由に設定することができ、顧客(投資家)は知り得ないという問題が生じるのである。

特に、劣後債のような短期的にリターンを得ようとする投資商品は、販売会社から短期間での売買による隠された手数料稼ぎの餌となる恐れがあります。

まとめ

一般個人投資家の債券投資は、株式・投資信託等に比べリスクが低く、分散投資として有効な投資と言えます。

しかし、外国通貨建て劣後債については、発行体の破綻等の信用リスクや為替リスクヘッジ等を一般投資家が自力で知ることは難しい。そのため、金融機関に相談することで手数料稼ぎのカモになってしまう恐れがあります。

もちろん、リスクを十分把握の上、投資をするのであれば特に問題ないが、一般投資家がよくわからない投資商品に手を出すのは賢明ではないと考えます。

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