サラリーマンプライドを早めに捨てよう: 定年後のおすすめの働き方は「フリーランス(起業)」

定年後の働き方

定年近くになると、多くのサラリーマンには、「年収の壁」ならぬ2つの「年収の崖」が待ち受けている。

サラリーマンの多くは、50代後半になると役職定年によって年収が下がる(第一の崖)。さらに60歳になると同時に年収が激減(第2の崖)するため、定年近くのサラリーマンは、今後の仕事の在り方についての選択をしなければならない。

そのため、40代後半から50代半ばになると、多くのサラリーマンが企業主催のリタイアメントセミナーを受講させられる。

いわゆる「たそがれ研修」である。

これまでは、定年後の社員が燃え尽きて無気力になったり、職場という居場所を失って孤独にならないようにするために、セカンドキャリアや今後の生き方を真剣に考えてね、というのが趣旨でした。具体的には、定年までに取っておいた方がいい資格・スキルや、給与水準の変化に伴うライフプランのシミュレーションから、熟年離婚で妻に捨てられないための心構えといったことまであるようです。

ですが、最近では、研修担当者からは、「今後、役職定年になった場合は給料が下がる。65歳まで再雇用もできるが、給料は一段と下がる。かつてのような条件のよい出向やあっせんもありえない。条件に不満がある人は、身の振り方を自分で考えるように」と厳しい口調で言われる。

そのため、最近のリタイアメントセミナーでは、金融機関の営業マンが講師として招かれ、今後は給料が下がり、かつ公的年金も65歳まで貰えないため、自分でしっかり資産運用を始めるべきとか、退職金を上手に活用すべき等、お金に不安のないセカンドライフを送れるようにお手伝いをしますと説明される。

そのリタイアメントセミナーでは、今後の働き方の選択肢として、65歳までは引き続き雇用できますという、いわゆる「継続雇用」を勧められることが多い。

そのまま受け入れていいのかどうか不安になるサラリーマンも多いのではないでしょうか。

定年後の働き方は、大きく分けて「継続雇用」「転職」「フリーランス(起業)」の3つの選択肢がある。

多くのサラリーマンは「継続雇用」を選択されている(以下記述)が、私が考えるベストチョイスは「フリーランス(起業)」である。

以降、「フリーランス(起業)」をお勧めする理由を解説します。

継続雇用と転職は「居場所」がない

まずは、多くのサラリーマンが選択されている「継続雇用」および「転職」の実情についてお伝えします。

継続雇用

2021年4月施行の改正高年齢者雇用安定法によって、企業は高年齢者の雇用を確保するため、一定の対応を求められるようになりました。60歳定年企業において、過去1年間(令和3年6月1日から令和4年5月31日)に定年に到達した方は、379,120人であった。このうち、継続雇用された者は87.1%(うち子会社等・関連会社等での継続雇用者は2.7%)、継続雇用を希望しない定年退職者は12.7%、継続雇用を希望したが継続雇用されなかった者は0.2%であった。

出典:厚生労働省 令和4年「高年齢者雇用状況等報告」

「とりあえず65歳までは再雇用されるので安心」

と思っているサラリーマンの方が多いと思いますが、決して良い選択とは言えません。

理由は、まず雇用が「65歳まで延長される」ということではなく、一旦、退職して1年ごとの有期契約となり、最長でも65歳までしか働くことはできません。給料も多くは半分や3分の1程度になるのは決して珍しくありません。

そもそも、再雇用制度は、雇用情勢の変化や労働需要が大きいことを理由に創設されたものではなく、年金の受給開始が65歳になることによる「年金の空白期間」に対応することが目的です。企業として60歳以上のシニア社員を有効に戦力化して活用しようとするまだ企業は少ないです。

つまり、責任も権限もあいまいとなり、会社に「居場所」がない状態となります。このような状況で働くのは精神的にもつらいものがあります。

再雇用に応じるのであれば、単に給料が下がるだけではなく、そういう状態になるということを理解したうえで働く必要があります。したがって、定年後も年金がもらえるようになる65歳までは再雇用で働けるから安心と安易に考えないほうが良いと思います。

転職

中高齢者の転職市場は厳しい状況にある」

厚生労働省「転職者実態調査」によると、40代前半までは転職が賃金の増加につなががる人の方が多いが、50代になると賃金が減少するほうが多くなり、60代前半では61.1%の人の賃金が減少(増加はした人は14.7%)している。

転職が厳しい理由のひとつは、求職者がこれまでの地位や経験を過信し、大企業での就業経験やこれまでの肩書や仕事経験に固執することで、仕事が見つからない状況に陥ってしまう。

転職する場合、主にハローワークを通じて仕事を見つける人が比較的多いが、あくまで労働市場の需給関係でマッチングする。つまり、あなたの能力を評価して紹介されるわけではない。

もちろんこれまでの経験を生かすことは大切であるが、シニアの転職については過去の経験は必ずしも通用しない。むしろ転職することへの妨げになる場合もある。

シニアの転職には、これまでの人脈を生かして転職先を紹介されるケースもあるが、転職先である特に中小企業では、社長がルールであり、これまでの仕事に対する考え方と合わず途中で退職してしまうことが多い。

フリーランス(起業)という働き方

定年後はストレスなく働く方が多い

現在、正規雇用者は55歳~64歳で55.4%65歳以上で23.6%(図2)となる。一方で、非正規雇用は、55歳~64歳では50.4%、65歳以上では76.4%(図2)であり、最も一般的な働き方に変わる。

つまり、定年後は、自身のストレスがなく、日々の生活のために無理なく稼ぐことを選択されている方は多いのが現状である。

出典:労働力調査(詳細集計) 2022年(令和4年)総務省統計局

フリーランス(起業)の職種

フリーランスの職種には大きく分けて以下のとおり3種類ある。

①国家資格が必要になる職種:医師・弁護士・公認会計士・建築設計士である。実務経験も数年以上必要である。これらの資格によって独占されやすいため働き続けやすい。

②一定の専門性を要する職種:理美容師・雑誌やWebメディアのライター・営業であれば、業務委託を結んで不動産・保険等の営業代行をする仕事である。雇用の責任を回避したい企業と組織の論理に振り回されずに働きたい高年齢者との間で利害関係が一致している。

③必ずしも専門性を要しない職種:就業機会を提供する「シルバー人材センター」が一定の役割を果たしている。シルバー人材センターが請け負っている庭木の剪定、販売スタッフ、ドライバー、宅配業務、個別指導講師等がある。

高年齢者が多い職種は農業で52.6%である。次に比率が高い職種は居住施設・ビル等の管理人で、47.1%、次に、法人・団体役員36.1%が高い。また、コンビニやスーパーなどの販売員11.6%、不動産仲介や保険商品の代理販売の販売職が多く、理美容師、クリーニング店のスタッフ、飲食調理などのサービス職が多い。また、タクシートラックドライバー、清掃など高齢就業者を積極的に受け入れている職種も多くなっている。

定年後においては、社会に一定の貢献をしながら自身の幸せな生活と仕事とを両立させていく方法を考えていく必要もあるだろう。定年を迎えようという時期をにらみながら独立に向けた準備を行い、定年後に自由な働き方を選ぶという選択は、よい選択となる。

働く意義

多くの人は定年後の仕事はきっとつまらないものになるだろうと直感的に思うかもしれない。しかし、厚生労働省「労働安全衛生調査」によると、年齢別にみると現役世代の労働者の半数以上が何かしらのストレスがあると回答している。

その一方で、60代以上の65.1%は強いストレスはないと答えている。仕事に関するストレスの原因として仕事の量や質・仕事の責任・対人関係などである。シニア世代は、ほぼすべての項目においてストレスが少なくなっている。つまり「小さな仕事」だからこそストレスなく働くことができるのである。

リクルートワークス「シニアの就労実態調査」によると、20代で仕事に価値を感じる一番高い項目は「高い収入・栄誉」である。50代前半は「高い収入・栄誉」という価値観に意義を見出さなくなり、新しい価値観を見出す転機の年代である。高齢になればあるほど高まる価値観とし「他社(社会)への貢献」「体を動かすこと」などがある。20代には重視されない価値観である。

また、定年を境に仕事満足度が急上昇する壮年期の労働者にうち、仕事に満足しているのは3人に1人しかいないが、50歳以降は一転して仕事に満足している人は急上昇する。60歳の就労者の45.3%70歳の就業者の59.6%が仕事に満足している。これはかつて責任ある仕事を失って低い給与で働いている事実に照らすと意外な結果である。

「林住期」(五木寛之著 「林住期」(幻冬舎文庫)より)という考え方

インドに伝わる四住期という、生まれた時から人生を25年ずつ4つの時期に分けるという考え方である。0~24歳「学生期」25~49歳「家住期」50~74歳「林住期」、75歳~「遊行期」と名付けられています。

「家住期」である25歳~49歳までの25年間は、仕事でもプライベートでも、会社のために、また、家族のために生きる年代です。

しかし、50歳「林住期」以降の働き方は、誰のためでもなく自分のために働くべきである。

49歳頃までは家族第一と考えて生きてきた人が多いでしょうが、50歳からの「林住期」はまさに自分のやりたいことを最初に考える時期ではないでしょうか。

定年後の働き方は「フリーランス(起業)」がベストチョイスである

フリーランス(起業)がベストチョイスである3つの理由が以下のとおりである。

①楽しみながら働くことができる

定年後の働き方において、体力や気力の変化と向き合いながらも、今ある仕事に働く意義があると感じたときに、人は心から楽しんで仕事に向かうことができる。フリーランスになることで、楽しむことでストレスなく働き続けることができる。現在でも、多くの人は意外にもこうした境地に自然とたどり着いているのが実情である。

学び直しをすることで自分で定年を設定することができる

定年前から、自ら学び直しをすることによって自身の専門性を高め続ける準備をする。定年後も自分というスキルを持つことで、会社の看板を外す(定年)になっても収入を得ることで豊かな老後を迎えることができる。また、定年(仕事による収入の終了)を自分自身で設定することができ、「お金」に関する不安も解消される。

③孤独から解放される

【高齢者の検挙率】

近年、刑法犯の検挙人員が減少している中、高齢者人口及び総人口に占める高齢者人口の割合の増加もあり、高齢者の刑法犯検挙人員は、平成10年代に大幅に増加し、その後も高い水準を維持している。また、検挙人員総数に占める高齢者の割合は、平成元年(1989年)から令和元年(2019年)にかけて2.1%から22.0%に上昇した。

出典:警察庁Webサイト 「高齢者による犯罪・事故への対応と防止に向けた取組」

まとめ

サラリーマンプライドを早めに捨てることが重要

定年を意識する50代前半から、「高い収入」を追い求めるキャリアからの転換しなければならない。キャリアの高みを目指すことをどのようにしてあきらめることができるか。それが定年後の幸せな生活を送れるかどうかを大きく左右するのである。つまり、サラリーマンの方であれば、早めに、出世競争から自らをドロップアウトすることで、定年後の働き方の準備をする時間をしっかり作ることが重要である。

遠い将来においては、あらゆる仕事がAIによって完全に自動化され、人が仕事に従事しなくても済む未来が実現するかもしれないが、少なくても今後、数十年という単位でみれば多くの領域では人と機械との協業が進展しつつも直接的な価値創出に貢献している人たちの仕事が不要になることまではないだろう。

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