「未承認薬をいち早く使いたい」。「健康保険対象外になっているけれど治療を受けたい。」
そんな患者さんたちの思いに応えるためにつくられた制度です。
ここでは、実際に患者申出療養制度を利用した方の実例に基づき、「患者申出療養制度」をご説明します。
これを読むことで、
①具体的な患者申出療養制度を利用するまでの流れ
②実際かかった費用
③民間の医療保険の活用
がわかります。
【実例】病名:悪性脳腫瘍 国立がん研究センターへ入院
手術:開頭手術
放射線および抗がん剤治療あり
がん遺伝子パネル検査とは
【診察時に主治医の先生より】
「今の薬の処方は12回までです。遺伝子パネル検査を受けてみましょう。他に合う薬がみつかる薬がみつかるかもしれませんね。」
がん遺伝子パネル検査とは
がん遺伝子パネル検査は、がん細胞に起きている遺伝子の変化を調べ、がんの特徴を知るための検査です。がんの特徴が分かれば、一人ひとりに適した治療法を探すことができます。
患者さんのがん組織や血液を使って、がん細胞の数十から数百の遺伝子を一度に調べ、その中で起きている遺伝子の変化を確認します。遺伝子の変化によっては、効きやすい薬が分かる場合があります。検査結果は「エキスパートパネル」と呼ばれる専門家の集まりで検討し、担当医はエキスパートパネルで話し合われた結果を参考にして、治療法を患者さんに提案します。
また、この検査は保険診療で行われるものと、自費診療で行われるもの、研究で行われるものがあります。費用に関する詳しい情報は担当医にお尋ねください。
出典:国立がん研究センターがんゲノム情報管理センター「がんゲノム医療とがん遺伝子パネル検査」より
がん遺伝子パネル検査の費用
がん遺伝子パネル検査は、保険診療として実施されます。ただし、がんに関する遺伝的な体質についての詳細な情報をえるために遺伝子カウンセリングや遺伝学的検査を受けたい場合には、追加の費用が発生することがあります。
がん遺伝子パネルの検査の利点と限界
この検査の結果、あなたの今後の治療に役立つ情報が得られる可能性があります。がんにかかわる遺伝子の研究は日進月歩であり、その結果の解釈も複雑なため、専門家が最新かつ確かな情報を用いて検討します。しかし、それでも、あなたのがんの治療に役立つ情報が得られない可能性は残ります。
この検査を受けた方のうち、検査結果に基づいた治療を受けられるのは、約11~34%に留まる(海外実績)と想定されます。つまり、約66~89%の患者さんはこの検査を受けても、検査結果がご自身の治療に直接つながらない可能性がありますが、この確率は検査する時期やがんの種類によって異なります。
また、あなたに適した薬剤が見つかった場合でも、以下のような場合には、あなたの治療法として選択できないことがあります。
ー日本国内では販売が承認されていない薬剤の場合
ーあなたのがんへの適応が認められていない薬剤の場合
ーあなたが参加条件を満たさない臨床試験・治験でのみ使用されている薬剤の場合など
出典:国立がん研究センター がん遺伝子パネル検査に関する説明文書より
患者申出療養制度の手続きの流れ・費用
患者申出療養制度の申出
【遺伝子パネル検査 結果説明~申請】
検査の結果、効果の可能性のある薬が見つかりました。普通は脳腫瘍には使わない薬なんだよね。少しお金はかかるけどその薬を使う方法があるんだ。患者申出制度って言ってね。
ぜひ利用したいです。患者申出療養制度申請します。
患者申出療養制度とは
先に述べた患者申出療養とは、困難な病気と闘う患者の思いに応えるため、先進的な医療について、患者さんの申出を起点とし、安全性・有効性等を確認しつつ、身近な医療機関で迅速に受けられるようにするものです。患者さんの申出をもとに、臨床研究中核病院が臨床研究を立案し、患者さんの希望する療養を臨床研究として実施する制度です。
参照:厚生労働省 「患者申出療養制度」
参照:患者申出療養を実施している医療機関の一覧
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/kanja/kikan.html
患者申出療養制度の実施までの流れ
【患者申出療養制度 承認~実施】
2か月後 承認されました。これで効果の可能性のある薬が使えます。良かったですね。では新しいお薬で治療していきましょう!費用は約40万円です。
先生、ありがとうございます。これで治療にも前向きになれます。でも40万かぁ~。。
出典:厚生労働省 「患者申出療養制度」より
民間の医療保険の活用
民間の保険会社のなかには、オプションとして医療保険に付帯することで患者申出療養の費用をカバーできる商品(特約)もあるのでいくつか紹介する。医療保険を選考するポイントとなる。
①アクサ生命 スマート・ケア【患者申出療養サポート特約】
その技術料と同額の給付金をお支払いします。1回の療養につき1,000万円限度、通算2,000万円限度となります。また患者申出療養にかかる技術料は取扱保険医療機関によって異なります。
②チューリッヒ保険 終身医療保険プレミアムZ【先進医療・患者申出療養特約】
所定の先進医療または患者申出療養にかかる技術料と同額(通算2,000万円限度)を保障。
③メディケア生命 新メディフィットA 【先進医療・患者申出療養特約(21)】
技術料相当額(自己負担額)(先進医療・患者申出療養一時給付金との通算2,000万円限度)を保障。
まとめ
がん遺伝子パネル検査により候補薬が見つかるのは約40%以下である。さらに見つかっても、そのうち、国内未承認薬(一定状の効果は確認されているが、安全性についてはまだ科学的に確認が取れていない薬剤)が約50%、適応外薬(日本でも薬事法上の承認を得て流通はしているものの、適応となる疾患が限られており、疾患によっては治療薬として使われないもの)が約25%、承認薬が約25%であり、その多くは、日本では承認されていない薬剤である。
しかし、未承認薬でもいちはやく使いたい、また、健康保険適応外になっているが治療を受けたいとの患者さんたちの思いに応えることができるのが患者申出療養制度です。
また、保険診療部分については保険適用となり(*保険外併用療養制度)費用も抑えることが可能となりる。
保険外併用療養制度とは
わが国の公的医療保険のもとでは、原則として、保険適用の療養と、保険適用がされていない療養とを同時に併用することは許されていません。ただし、例外として、厚生労働大臣から、治験や先進医療といった評価療養、患者申出療養という制度の下で行うことが許された保険適用がなされていない療養については、例外的に保険診療と同時に併用することができます(保険外併用療養費制度といいます)。その保険適用外の療養にかかる費用は、患者さんから徴収することが可能となっています。
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